ナタリア・ゴンチャロワ(1)

ナタリア・ゴンチャロワ(ナタリア・セルゲーエヴナ・ゴンチャロワ、Наталья Сергеевна Гончарова)(英語表記 Natalia Sergeevna Goncharova)は、1881年ロシア生まれの美術家です。彫刻を学んだ後、モスクワで絵画の勉強をし、作品を発表。パートナーであるミハイル・ラリオーノフと出会い、1919年にパリに移住、1962年の死去までパリで暮らします。

これは1910年の作品、Peasant Woman from Tula Province(トゥーラ地方の女性小作人)です。ゴンチャロワは、モスクワから三百キロほど離れたところにあるトゥーラ地方で育ちました。その土地の女性を描きたかったのでしょう。刺繍が施されているこの服は、ロシア農民の民族衣装なのでしょうか。わたしの目には、この女性が戸惑いを感じているように見えます。どこに目線を向けていいのかわからないような。この衣装も、着こなしているというより着せられているような印象すら受けます。モデルとして画家の前に座るのは、これが初めてだったのかもしれません。と同時に、彼女の体からは頑丈な自信が感じられます。

テート・ギャラリーのNatalia Goncharova Exhibition Guideより。

The Short Story of Falling

英国の詩人Alice Oswald(アリス・オズワルド)の詩の試訳。原文はこちら

落ちてゆくことの短い物語

それは落ちてゆく雨の物語
葉へと変わり ふたたび落ちてゆく雨の

それは夏のにわか雨の秘密
光を盗み 花のなかに隠すにわか雨の

そして 地面から緑色に つかの間に流れる
小さな支流であるすべての花は

水の望みのひとつだ そしてこの物語は
わたしの親指の爪より小さな 種の冠毛に 吊り下がっている

もしも 通行人のわたしが 草の羽毛を
水と同じくらいに澄んで 通り抜けて

昇る雨のしずくのように
種へと変わる先端に隠れた 日の光を見つけることができるなら

わたしは水のように 希望の重みと 忍耐の光の
釣り合いをとる方法を 知ることができるかもしれない

鋳鉄のタンクに潜み 漏れ出る
生のままの 粗野な水は

わたしの舌に向かって 重力で引き寄せられ
この歌のパイプを冷やし 満たす

それは落ちてゆく雨の物語
光へと昇り ふたたび落ちる雨の