うろこ新聞 2001年月日
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うろこ新聞 2001年10月17日号(みーさんちの2匹の猫)



 文句あるか(悲惨なる壁紙) 猫名:kiki


 ガンつけたな? 猫名:jinbi

 写真キャプションはみーさんです。家の中で自由にしている猫たちですね。(鱗造記)


【倉田良成の解酲子飲食 43】

小僧のマグロ

 志賀直哉の「小僧の神様」のなかに、小僧が奉公している店の番頭連が屋台で握ってもらうマグロ寿司の話をするところがあって、そのマグロの脂の乗り具合といい、鮮やかな赤さといい、読んでいるこっちまで舌なめずりしたくなるような描写だったが、あれなら小僧が指をくわえるのもむべなるかなの説得力は、大作家のあまり表面に出ることのなかった食通ぶりをかえって窺わせる。あのマグロ寿司は、今でいうなら高級寿司店の大トロないし中トロというところであろうが、小僧がそんな身丈知らずの食い物に指をくわえるはずもなく、あれはまだまだ貧しい頃の日本の、ほんの少しだけ余裕の出来てきた番頭衆の密かな愉しみ、というぐらいの地位にある当時の握り寿司というものの実態を表していたのである。その屋台で酒を出していたかどうかはつまびらかにしないが、今でも中高年のお父さんたちが仕事帰りの小さな愉しみとしている、焼きトンやレバ刺しで一杯というところを、番頭たちのそれはいくらも出ていないのではないか。あの脂具合のマグロをあぶったら、というのは何もビール会社の宣伝の発明であるわけではなく、若い頃、バイトをしていた運送屋の若旦那が、寿司屋でちょっとあぶってもらう大トロのうまさを縷々語ってくれたことがあるが、そのとき私が「小僧の神様」のちょうどその小僧であるかのような情けない心持ちになったのは事実だ。後に築地の市場で夜警をやった折、ごろんと落ちていたトロの塊を拾ってきて塩で焼いて、その凄い味わいだけは知るところとなったが。

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