うろこ新聞 2001年月日
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うろこ新聞 2001年9月24日号



 昨日は高階杞一さん、阿瀧康さん、嵯峨恵子さんたちの詩誌「ガーネット」が主催した会に行ってきた。関西から来られた方も多かったようで、小ぢんまりした会だった。


 海埜今日子さんもフットワークが軽くて、何かの集まりでよくお会いする。これは豹柄がお好きな海埜さんの、爪も豹柄だという写真。


 ミステリー小説の紹介をこの新聞で連載くださっている足立和夫さん。


足立和夫のお薦めミステリー小説 (2)

逢坂剛(おうさか・ごう)初期傑作ミステリー紹介(その1)

 なにをかくそう、私のミステリー読書事始めは、わずか6年位まえ。会社の同僚から薦められた逢坂剛なるミステリー作家の『百舌の叫ぶ夜』(集英社文庫)だった。一気読みさせられ驚愕した。日本に、こんなトリッキーな作家が存在していたことに、である。
 それまでは、ときどき騒がれたミステリーを手に取ってみるだけで、こんなものなのかな、と思うだけだった。たとえば高村薫『マークスの山』だったりして「日本のエンターテイメントはこのくらいなんだな」と呟き、それでお終い。なんとなく遠ざかる。
 そんなときだった、逢坂剛の作品に遭遇したのは。読み始め、ただならぬ予感が脳天を貫き、物語に吸い込まれる。恐るべきストーリー展開の速度。極端に表せば、文章の一行一行がストーリーの緻密な展開になっていて、ムダのない文章というより文章自体が消えている。そんな印象を与えるほどストーリーは興味津々で、ハード、冷徹、情念。文句なく一級のミステリー小説。
 そして私は思い当たったのだ。子供のころ夢中になった数々の冒険小説を。これは大人を夢中にさせる冒険小説なのだ。大人の鑑賞に堪えるミステリー冒険小説。ハードボイルド小説。予想を超えたどんでん返しがまたどんでん返る。さまざまなギミックが仕掛けられている。
 なんといっても背筋がぞくぞくする快感にひたれることだろう。人間がみせる不可解な心こそミステリーなのだ、と読む者に思わせる作者の力量は、やはり並はずれたものだ。ほかの日本のミステリーを圧倒し、世界で充分に通用する作品である、というのが私の評価です。続編『紅の翼』『砕かれた鍵』(集英社文庫)。完成度の高さは見ものです。

「あらすじ」
場所は新宿。殺し屋百舌(もず)は新左翼系のジャーナリスト筧俊三を暗殺しようとじりじりと焦っていた。スキがないからだ。しかし、その百舌を追跡する者がいた……。そして思わぬ爆弾の破裂。物語がはじまる。殺し屋百舌を追跡する公安警察の秘められた意図。公安警察と刑事警察のあつれき。異彩を放つ登場人物たちのさまざまなキャラクターは強烈。

(買われる前には、ネット検索して、さまざまな人の紹介・感想を読み、ご自分の好みの小説かどうか判断してみてください)


【倉田良成の解酲子飲食 32】

水について 其ノ二

 口許や顎のあたりに薄いヒゲが生え始めてきたあたりから、新宿などのバーに出入りするようになったことはまえにも書いたが、水割りというものを初めて口にしたのもその頃だったと記憶する。それまではウイスキーといえば専ら、友達や先輩の下宿での、いまでいうチェイサーなしの安酒ストレート一本槍だったのが、曲がりなりにもカウンターにいる女性というものに酒を作ってもらうというのはわくわくするような経験だった。私も若かったのだ。そのときの水割りというのが、いまから思えば同じような安酒に氷をぶちこんで水を注いだだけのものなのだが、まったく違う世界を望見するような特別な味がした。その水は、もう少し高めの店に行けば当然瓶で売っているミネラルウォーターであるべきで、だが私どもが行くような店では蛇口から直接グラスに入れたりしないだけがご愛嬌という水道水であり、その水をピッチャーに移したうえで注ぐのが、それで作られた水割りをこの世ならぬ飲み物にするという幻惑をもたらした。一緒にいた友達が「作ってもらうとなんでこんなにうまいんだ!」と溜息まじりに呟いたことがあったが、思えばあれが不孝・放蕩の危険な入口だったのであろう。その門こそくぐらなかったが、数年後、京都は白河通のバーになぜか入って、出てきた水割りはさすがに京の水の味で、着物なんぞをきりりとお召しになったママにそのお値段を聞き、直ちに一杯でやめにしたことがある。

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