うろこ新聞 2001年月日
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うろこ新聞 2001年9月13日号



 アメリカの同時多発テロが起きて、だいぶテレビを見ていた。これは久しぶりに見た新聞の号外。本文も大きな字で印刷されている。前に古本屋さんで買った井筒俊彦『イスラーム思想史』がちょうど、ごたごたした書棚の前面に出てきていた。これを読もうかと思っている。


【倉田良成の解酲子飲食 27】

麺と小父さん

 銀座や日本橋、神田あたりで昼、蕎麦屋の暖簾をくぐるとグレーのスーツ姿が一斉に蕎麦をたぐる音を立てている光景に圧倒された経験は、誰しもあるのではないか。その場合、温蕎麦というのではまずなくて、十人が十人、せいろかざるである。サラリーマンという呼称がバブルの頃にビジネスマンに変わり、またいつのまにかサラリーマンに戻った最近でもその事情に変化はない。ネクタイを締めた男はなぜだか蕎麦を好む。肉体労働をやっていた若いとき、蕎麦屋に入って前述の光景に遭遇して思わず勢いでせいろを頼んだが、蕎麦を二枚注文してもツユに生卵を入れても肉体労働を支えるだけの満腹感は得られず、苦い思いをしたことがあって、いつか自分もとろろ蕎麦あたりで昼飯を小粋にキメられる身分になりたいものだと考えた。同じ蕎麦でも、これは馬喰蕎麦という異名を持つ立ち食い蕎麦のほうだが、ここでもうら若い女性が天玉蕎麦をすするなんかを目撃したことはあまりなくて、大抵は、スーツ姿とは限らないが黒っぽいのがひしめきあって盛んに音を立てている。この馬喰蕎麦はいわゆる蕎麦屋の蕎麦には及びもつかないが、変に魅力的なところがあるのは、例えば何かの拍子にイタリアンレストランのでない街の喫茶店の、安いハムとケチャップだらけのナポリタンを無性に食いたくなる衝動に相似るものがある。

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