うろこ新聞 2001年月日
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うろこ新聞 2001年8月31日号



 寝ているベル。フラッシュを焚いたら目を開けてしまった。犬も猫も言葉はある程度通じる。


【倉田良成の解酲子飲食 18】

パスタ式目

 スパゲッティはコシのあるふうに仕上げるのが難しいというが、はたしてそうだろうか。考えるに、麺の上げどきというのは勘でも長年の修練でも、ましてや才能などというものでもなく、あれは袋に印刷されているその麺のゆで時間というものを厳密に守りさえすればいいというのが週にいっぺんはパスタをゆでている私の感想だ。ただし沸騰した湯に入れる塩は麺に味がつくぐらい濃いめのほうがゆで上がりはいいようだ。そしてゆで上がったら間髪を入れず温めておいたソースにからめてすぐにいただく。麺をソースにからめるときにはすでにソースパンの火は極弱にしておくこと。出来上がってから五分以内には口に運んでいるという状態でなくてはいけない。あたかもわが邦の蕎麦っ食いのような慌ただしさであるが、これがかの伊太利の作法なのだからいたしかたない。ただ、作法というのは行儀のようなものとは違って、これをしないと絶対おいしくないという、あくまでも食味が中心となって自然に仕来ってきたものなのだから、雰囲気や名目でなく料理それ自体が目的の食いしん坊なら、この約束を、峨々としてそびえる雪を戴いたアルプスのように厳然たる法と痛感するはずだ。それさえ守れば、あとは指についたソースを舐めようが、たとえば具の蟹の殻をしゃぶろうが、ワインを飲んで騒ごうがたいがいおとがめはない。

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