うろこ新聞 2001年月日
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うろこ新聞 2001年8月24日号



 今日は近所の空地の雑草を撮ろうと思って果たせなかった。単に雑草が生えている場所に引きつけられる。代わりに、夜景を撮って画像処理ソフトで、少し明るくしてみた。


【倉田良成の解酲子飲食 11】

ラーメン慕情

 ラーメンは、一杯が三十円だった頃のそれこそ餓鬼の時分から食い慣れたメニューではあるが、これはというものにはなかなかお目にかかれないでいる。それは例えば、ヘーゲルがかの精神現象学序論で述べたごとく、狂気の男が果物が食いたいと言って差し出された林檎や葡萄や苺のことを、これは林檎や葡萄や苺にすぎず、自分の欲しいのは、「果物」なのだと言い放ったひそみに似る。いまにして思えば、トラックの助手をしていた若い頃、仕事が終わると東京の方々の街でトラックから降ろされて解放されたが、切ないほど腹が減った黄昏時に飛び込んだ芝大門や代官山や板橋大山やの名もないラーメン店のラーメンはしみじみとうまくて、だがそれがなんという店のどんなラーメンであったのかは再現できない。最初にこれはと思った店は、渋谷百軒店にいまもある喜楽で、そのきしめんみたいな麺と焼いた葱を散らしたスープののどごしはいわゆる東京ラーメンとは少し趣を異にするが、ヘーゲルのいう「果物」に近い。丸信やホープ軒のことはひとまず措き、現在居住する近所でいえば横浜六角橋の六角家が名高いが、あそこの海苔とスープの相性はひとつの見識である。ただ店員の怒号をかいくぐって注文する雰囲気にはちょっとヒルむ。

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