苔桃

yoyo




大いなるアルプス山系
山麓のとあるロッジ
偶然か必然かあなたと出遭い
薄雲がかかる山頂に


二人の歩調は不揃で
年少の私が先をゆき
僅かに息の合ったとき
濃緑あふれる山道で
そっと手をとりあう


遠ざかってゆく裾野の風景


立ち塞がる分かれ道
あなたは左へ 私は右へ


同じ頂上に着くことを
胸のうち 密かに願い
一歩ずつ 歩んでく
高山の道程
一歩ずつ 歩んでく


ほのかな香りに誘われ
薄桃色の苔桃の実
一粒摘んで


あの霧の彼方
きっとあなたは立っている
頬は実の色に染まり
心は甘酸っぱい未来に沁みて




うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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