老いた人の佇む岸辺kuku
老いた人は岸辺に佇み
流れの先の
ただ
その先の一点を見つめている
来し方も 行く末も
川に投げ入れて すでに久しく
流れ行くものは 何もなかった
にもかかわらず
彼は
幾筋もの流線が描く不定型な模様を
記憶しようとしているのであった
それは無意味な所作
と
背の向こうで声がするのだが
その囁きに彼は振り向かない
せせらぎが
ひたひたと 足元を洗い
彼は 徐々に浸食されていく
こうして
川との同化は静かに進行しているのだった
一条の閃光
長い朱の帯
夕日は穏やかに充ち
落ちていく
流れの先の向こう側に
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