不健全な生活

会計担当



缶ビールを買って戻って
つまみを漁っていると
冷凍庫の中に
正月実家から送られてきた餅をみつけた

早速、電子レンジで解凍して
トースターの中に入れてタイマーを回す
ジィィィィィィィィ、と
タイマーの戻る音が胃の中に響いた

買い物の帰りのこと
人気のないバス停で
おんながひとり
屋根のないベンチに坐っていた

おんなは
膝の上に置いた手をじっと見つめて
太陽に焼かれながら
バスを待っていた

ひょいっと
トースターを覗き
ジリジリと焼かれる餅を見る
すると何だか
焼かれているのは
僕の方であるような気がしてくる

おんなは
太陽に焼かれながら
バスを待っていた
僕は
意識に焼かれている
何かを待っている

「わかっているさ」
と、つぶやいてみる

そうすると
ますます
焦りが皮膚を焦がすのを感じる
ジリジリと
僕は焼かれている

突然
ポンッ!と餅が破裂した
僕は我に返り急いで餅を取り出す

皿の上にのせ
醤油をかけて
海苔を巻いて食べる

そうして
餅を頬ばっていると
やがて
再び皮膚が焦げはじめる

ジリジリと
焼かれて膨らんだ餅を食べながら
ジリジリと
焼かれて膨らむかもしれぬ腹をみて
僕は少し
ビールをためらう


うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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