ドラえもん「森は生きている」

まつおかずひろ(hiro)


いやなことがあると
のび太はいつも学校を抜け出して
裏山で昼寝をする。
ごろんと横になって
森と話ができたらいいな、なんて思ったりする。

あるとき、不思議なものが届いた。
「心の土」だ。
ドラえもんが気を利かせてプレゼントしてくれたものだった。
「心の土」のおかげで
森は優しく話しかけてくれるようになった
木の葉のベッドや木の実ももらった。

あんまりの居心地よさに
のび太は ますます森に入りびたるようになった
ちっとも友達と遊ばないし勉強もしなくなった
ドラえもんはさすがに心配して森の精を呼び出した
「このままじゃ、のび太ダメになっちゃうよもう、のび太を森に近づけないで・・・」

その声を聞いた森の精はドラえもんの願いをききとどけて
のび太を追い払った
「ありがとう、森さん、きみはやっぱりのび太のこと大切に思ってくれてたんだね」
とドラえもん。

でも、のび太は
「信じられない、あんなにやさしかった森が…」
と目をぱちくりさせて、悲しそうな顔をした。
「夢をみていたと思ったらいいんだよ」
そう言ってドラえもんはすっとぼける
のび太はわけが分からなかった
ドラえもんをうらんだ 
森をうらんだ


ドラえもんとさよならして二十年
のび太は疲れた体を休めるために
母校の裏山にあがって昼寝した
昔ここに来たことは覚えているのだけれど
うらんだことなんかすっかり忘れていたし
木の葉のベッドのことも忘れてしまっていた
夢も見なかった
ちょっと寒い風が吹いて目がさめた
仕事を思い出した
立ち上がった
坂をくだっていく
のび太は 
背広にくっついた木の葉を 
はらい落とした



うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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