月の雫

萌木碧水




 
          取り繕いの哀願は
          いつでも
          その場しのぎの言い訳で
          もう 苦笑いしか
          出てこないから

          お月さま とってきてよ 

          あなたに そう
          言ったよね

          憤りの熱量は
          やわらかな心を摩耗させ
          なにもかもを
          悲しい疑念に変えてしまう 
          から
 
          ちいさな小箱に押し込めて
          遠く置き去りにして来た頃に

          頼まれものをとってきたよ
 
          握ったこぶしを
          差し出した

          月の雫を とってきたよ

          震えるわたしの てのひらに
          透明な球状の ほどよい重み

          約束は 
          守られないものなのよ
          あなた 
          うそつきなんだから

          わたしを
          ぎゅっと 抱きしめて

          俺があなたを 守るから

          やわらかな胸のぬくもりは
          月の光のいとしみで
          霜焼けたこころが 
          ゆっくりと 
          解けて ゆく

          そうだね
  
          ここが わたしの
          還る場所
 
      
 


うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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