旅立つ君へ

いつき・たつき



まだ見知らぬ君の
旅にゆく前と 後の
顔かたちの変化を知ることは出来ない

毎晩
語らっていた言葉は
空虚で重さのない電気信号だった

その刺激を受けて動いた
その心
その重さの分だけ
僕らはなにかを
交換した

どこからどこへいくのか
僕が知るのは ただ
風が変わるということだけ

はためく君の服は
君の皮膚を違った空気に浸すだろう
そして
いつか再会し
初めて出会う僕を
旅先で一晩
思いだしてくれれば

帰ってきても
何も訊かず
ただ いつものように
一緒に戯れよう

それだけで
いい。


うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
UrokocityShimirin's HomePageSiteMap