腸閉塞の夜

yoyo




黄色い三日月がつるんと落ちていきました
長く細い夜道はくねくねととぐろを巻いて
それでもあなたのお屋敷へと足を運ぶのでありました


雨後の月明かりは眩しくてついぞ夜空を見上げては
不覚の前夜を思いおこし思い浮かべました


心中などとて鞄の中に偲ばせた包丁を
涙で磨いで研いてことを通りすがった初老の老人に語り
「あなたのような若者のおっしゃることではないですぞ」
とお叱りを受け俯いて塞ぎこんでいきました


歩けども歩けどもあなたのもとへと
辿りつくとままならずにおりました


何がわたくしを迷わせているのでしょうか
あの明るさが矢じりをわたくしの胸に撃ったからでしょうか
幼き日に決まった縁談が狂わせているのでしょうか


いいえ、それは悲しいほどわたくしはわたくしのままでありました



うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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