海のSonnet

kenneth


水にあらわれた砂の渦が
沖のほうに運ばれていった
まるで世界が動いているかのようで
子供は思わず足をすくませた

沖の底に 大きな鯨がいて
そいつが欠伸しながら
砂の中のえさを飲み込んでいるんだ
ほら吹きの親父は そんな話を聞かせていた

その親父は ビーチパラソルの下で
ラジオの野球中継を聞いている
日焼けは彼の体質が受け付けないのだ

子供はじっと 海に見入っている
さっきの恐れは どこかに消えてしまった
子供はじっと 海に魅入っている


うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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