団地の日曜日

まつおかずひろ(hiro)


朝っぱらから娘はダンス、
ミニモニのおひなまちゅりを繰り返している。

妻は
「私はやっぱりモーニング娘よ」
などと言って、ウオーウオーウオーと踊りだす
イブニング娘じゃないか、と口まで出かかったが怖くて言えない。


午後は買物だ
 
「私は流行に反逆するのよ」
と妻はつんとすまして
無印良品の店に入った
 
ご近所の奥さんたちと
中でしゃべっていたと思ったら
皆、同じツバ広の帽子を被って出てきた

どうでもいいけど…、などと
ぶつぶついいながら
ぼくはアンティークの店に入る
 
「鎧はない?」と聞いてみた
「どんなのがいいですか」
「なんか なつかしい感じの 安心できるやつ」
「ほう、それじゃこんなのどうです?」
 
と、出されたのは
ポケットいっぱいのだぼだぼのデニム
 
携帯電話が入る
モバイル系のパソコンも入る
デジタルカメラも納まりがいい
 
「これ 鎧になりますか」
「なりますとも!」
おやじは平然と答えた


久しぶりのいい天気 
買ったばかりのデニムを着て
団地の公園に出る
デジタルカメラを忍ばせて
桃の花を撮るつもり
 
花壇の向こうで大声がする
大村さんだ
耳に携帯電話を押しあてているパーゴラの下では
清水さんがパソコンを打っている

こんにちは

こんにちは

こんにちは


似た服装をお互いに見ているが
誰もそのことには触れない

 
いい天気ですね
 ええ まったく
 まったく

どうも どうも

  どうもどうも

    どうもどうも



うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
UrokocityShimirin's HomePageSiteMap