ナツ ハ イチバン 死 ニ チカイ

ame*




ナツ ハ イチバン 死 ニ チカイ



絶え間なく地表を攻撃する夥しい光の微粒子
充満した炎熱-あつさ-が体の中にアルカロイドを吹き込む

世界は放物線を描いて

高みにある太陽の後を追おうとしていた

僕らは手をつないで波打ち際を歩き

けれども粘着性の世界の触手にからめとられないために

ミラーグラスの背後でひたすら沈黙した

ひょっとしたら僕らが世界の背後に廻り込んで

その巨大な宇宙的悪意の裏をかけるという錯覚

もう一人の自分は冷ややかにそれを見ている

積乱雲がめまぐるしく形を変えながら

僕らを催眠状態に入れようとしている

夏はいちばん「死」に近い






僕らの意識も肉体も行為もそして視界もすべて

生まれる遥か以前から悲劇に感染している

音楽的な配列をしたテトラポッドの森を抜けたところで

DNAに叛乱することなどできないわよ と眼球-め-の奥でしゃべりながら

きみは僕の腕のなかであまりにも普通の人類に萎-しぼ-んでいく

僕は離人症の精神レベルでやさしく絞殺されながら

無限の距離に視線の焦点-フォーカス-を合わせる訓練を続け

やがて深いブルーのむこうに

確かに暗黒の姿を認めたように思う

汗が空気と混じり合っていやなにおいに変わっていく

時間はほとんど猶予を与えずにすべてを劣化させる

夏はいちばん「死」に近い






うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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