円錐形の鏡 雨のスケッチ

金属犬






雨の日の深夜
ぼくの魂は洪水の音に目覚めて
闇の中の冷たく長い階段を
一段一段踏みしめるように降りていった
ゆっくりゆっくり降りていくと
だんだん
コンクリートで出来た壁は青く溶解し
眼は裸形の芥子の空に触れる
熱帯の森
鳥の囀りが聞こえ
皮膚は緑の汗を吹きだし
百の瞳孔が大蛇の口に落下する
腕には
氷土からやってきた一羽の蝶が死んでいる
楽園は地下の凍り付いた砂の塑像の疲労に
砂漠の河をつくり出す
雨の声が遠くからやってくる 瞑想する花弁
しかし
太陽は腐乱し切断された一本の毛の生えた足だ
ぼくの血は盲目の鳥となり黒く落ちていく
夜は朝のためにあるのではない
いくつもの月のトンネルを潜り
風が運ぶもの
夜は知覚の下に眠る未知の森

雨が降り注ぐ そして
この
魂に降る雨と
巷に降る雨は
やはり同じ色をしている







うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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