破裂した息

arei


春、
憂鬱な頭を
ナイフの尖端で削り取ると
感覚に、紅い椿の花が咲き、神経に充満し、凝縮され
荘厳な宇宙が歯のない口を大きく開き、
記憶という記憶が超光速のスピードで脊髄を駆け上って、
気息と共に曼陀羅の彼方に消えていった
思考が弾け、鋭い破裂音がひとつ鳴り
バイクが火花を散らしながら宇宙をゆっくりカーブする
口笛を吹きながら小刀で鉛筆を削り、現象という現象を墜落させる
ああ、感覚も、神経も、湖の底だ
感嘆符の弾け飛ぶ娑婆から一千億フィート離れて
横膈膜に纏わり付く幽霊達の囁きから三億光年離れて
記憶を滅却し、バターの匂いを想って、
インドネシアのフルーツを想像しながら、
魂にこびりついた悪臭を祓い僕は、
夜明けの街が叫喚するのを聴く


うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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