STARWIND

ame*



STARWIND
第3の衛星が燐光を発しながら地平に沈んで行く

廃星の表面は風紋を描く鉄錆色の砂が覆っていて

時間の座標を超えて現れる蜃気楼の下で

きみは自分が悲しい生物に生まれてきたことを感じる


26世紀のルビー・チューズデイが歌っている

この世界にはアプリオリなものなど存在しないわ

人間たちが魚類のように産卵しつづける幻想を別にしたら

この銀河のどこに悲しみなんかが存在するというの?



 だからきみは漂っていくことを選択するだけだ 

 リアリティーの彼方へ STARWINDに乗って 



アドルフ・ヒトラーが探し求めた地球内部の空洞では

複数の人格をもつ夢が人工冬眠を続け

影の世界にまで連続しているその触手が伸び

きみの感じやすい意識の底部を微かに刺激する


すべてはこの時空よりいくつも上の階層にいる何かが

自閉的なまどろみのなかで見ている夢に違いない

けれどきみはプラズマを纏ったシャーマンに導かれて

多層宇宙の地下世界深くにあるDREAMTIMEへ



 そしてきみは漂っていくことを選択するだけだ 

 リアリティーの彼方へ STARWINDに乗って 



きみの不要な存在の細片が体表からしだいに剥落して

空間に長い航跡を残し やがて散乱していく

すべてが飛び散った時 そこはリアリティーの彼方

STARWINDに乗って

STARWINDに乗って

STARWINDに乗って

STARWINDに乗って

STARWINDに乗って

STARWINDに乗って

STARWINDに乗って






うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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