天使の輪

萌木碧水





             あの日 あなたが
             空から一直線に描いた 
             飛行機雲は

             誰の為でもなく
             こども達の未来のため
             だった

             こども こども

             こんなに小さな身体で 
             こんなに傷ついた身体で
             お空によじ登って 来たんだね

             するする と
             飛行機雲を巻上げて
             天使の輪を
             たくさん作ろう

             あわてなくて大丈夫
             けんかをしなくて 大丈夫
             ちゃんとみんなの分
             あるからね 

             折れ曲がった細い腕に
             痣だらけの細いからだに
             あばらの出たその胸に
             やわらかなキスをして

             手をつなごう
             離れないように
             手首でつながろう

             小さな子は抱いてあげる
             いつも頑張っているお兄ちゃんは
             抱き締めて あげる

             ちいさなちいさな天使の輪を
             みんなでつなげて
             あの高いお山のてっぺんに
             天使の輪を描こう

             もう痛くないよ
             もうお腹はすかないよ
             大丈夫 大丈夫

             やさしいこころは誰も
             ひとりぼっちなんかじゃ
             ない

             あの高いお空のてっぺんに
             みんなで 天使の輪を
 
             かけよう





うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
UrokocityShimirin's HomePageSiteMap