さくら色のまじかに…

まろん




          「潮もかなひぬ 今は漕ぎいでな」


 少女の
 一九の春
 風に、ひらかれるあなたの胸には
 南から
 想いがやってくる。
 あかねさす
 すみれ色したその頬に
 夢のなかから
 白い波が
 うちよせる。

  「一九の春、一九の春」
   今でも
   あなたの戸口をたたいて、少女の
   鮮明で
   濃度のたかいその声が
   想いを
   生中継する。

 結った髪が
 春風に、
 慕いつづける青がひろがる。
 恋は禁止にみちていて
 花かおる、
 一九の春は
 さくら色した波のあわいに、
 恋の
 少女は波に乗り、
 あなたは
 春うらら。
 二十歳になるまで一九の習い事を

 指折り数えることは
 わたしの
 きもち
 を
 洗うこと。
 わたしの裸身は告別する。
 次の朝、
 少女に。


うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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