酔ひどれ船

王殺し


愚か者が乗っている
彼は陽気に笛を吹く
”なんて素敵な船旅だ”
彼の頭には赤い尖がった帽子
足踏みして笛を吹く

左側にはご老人
ブツブツとなにかつぶやいてる
波の間に間に消え隠れ
よく聞けばそれは念仏で
右手右足箱の中

ナインは其々居場所に座り
空を眺めたり底を見たり
ずるそうなピッチャはマウンドに
お調子者ぼセカンドは
相も変わらずお調子者で

船は洋洋と走っている
雲の切れ間を闊歩する
驚くなかれ飛魚よ
サムライの国からの大航海

船長は確か今年元服
ナビには彼の許婚(いいなずけ)
きつく互いに抱きしめて合い
唇が離れることは無い
それこそ唾液飲み干すまで

屋根のないこの船は
今は心地よい風がある
宵には明るい金星が
酔いどれには優しい季節だ

俺は一番後ろに座り
ジャックと一緒にながめてる
奴はいつも負けつづけ
それが奴の一生さ
磁石はとっくに海の底
オールは俺の尻の下




うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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