それは鳥身人面の魔女のこと

ぷらとー




最果ての海で
幸せな生活を送るんだ

限りある海で
力強く泳ぐんだ

まだここにいるのは何故だ
ここではダメだ
ダメなんだ

魔女が
ハルピュイアイが
飛んでいる

跳んでいるのは
反吐から生まれたノミどもだ

飲み尽くしてしまえ
くだを巻き
絡みつき
気炎を吐いて
テーブルをひっくり返すのだ

お前の居場所は
ここではない

彼が目をやるものを
見てはならない

彼が口にする言葉を
聞いてはならない

彼の鼻につく体臭を
嗅がされて
お前の趣味は
麻痺してゆく

限りない海を
力強く泳ぐんだ

果てしない海を
幸せに生きるんだ

ここで生きろ
ここでよい
ここがすべてだ

なにやら心地よい
欲望の音の洪水ですばやく
振動しつづける

震えているのは
啜り泣きを糧とする悦楽の鎖だ

腐っているのは
醜く歪んだ痩せた足

明日を飲み尽くせ
今日の
この日の
この瞬間に
すべてを消尽してしまえ

お前の居場所は
ここしかない

見たいものを見て

口にしたい詩をうたい

自らの体臭に酔い潰れて
痺れるほどに
幸福だ

最果ての海で
幸せな生活を送るんだ

限りある海で
力強く泳ぐんだ

まだここにいるのは何故だ
ここではダメだ
ダメなんだ

魔女が
ハルピュイアイが
飛んでいる





うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
UrokocityShimirin's HomePageSiteMap