looking at the world through a bulletproof plate glass window
うろこアンソロジー 2003年版 目次前頁(海亀のいる温泉) 次頁(洗骨)
UrokocityShimirin's HomePageSiteMap

looking at the world through a bulletproof plate glass window



水島英己

海に抱かれた岬がたえまない波の浸食をうけて険しい断崖を歳月の贈り物のように
おのれの姿として落日の下で受け取るとき
クソカズラがその一生をかけてイバラに抱きついているとき
これらの言葉なきものにことばを与えたものが死に絶えるとき

私たちは泣いている
苦しむことが不可能になったせいで泣いている
すべての不可能と可能は防弾ガラスによって透明に隔離されているので
すべての文明は美しい古都を瓦礫に化して私たちを招き入れなければならない

その出来事は私たちが意図して創ったのではない
谷間の村には有毒ガスが噴き上げ、日干しレンガの壁は懐かしいものたちを圧死させる
窓の向こうの悪意にむかってことばなきものたちが発作的な痙攣をひきおこすほどに

「植物の忍耐、動物の優雅さのために」たしかに称賛せよとウィスタンは歌った
たえず出来事は次の出来事に変換され、砂漠・空白のなかでヒトが泣いている
舞い上がる歌も傷もなく私たちは静かに出来事を待ち望む、違う出来事を


うろこアンソロジー 2003年版 目次 前頁(海亀のいる温泉)次頁 (洗骨)

うろこアンソロジー 2002年版 目次
うろこアンソロジー 2001年版 目次
うろこアンソロジー 2000年版 目次

UrokocityShimirin's HomePageSiteMap灰皿町