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清水鱗造
 
 なぜか閉館である
 ぜいたくな電灯が消されて
 階段から下に降りざるをえない
 
 1階は風呂になっている
 ふと見ると池のようだ
 大きいのや小さいのがあって
 大きいのにはウミガメがいくつか泳いでいる
 どろどろとしていなくもない
 これは温泉で
 南洋のウミガメを
 飼育している状態なのだろうか
 
 男がいるので話しかけると
 「ああ、これは温泉ですよ」
 と言う
 裸だがメガネをかけている
 
 バシャと音がするので
 少し上を見ると女が
 岩がたらい状にえぐれたところにたまった
 温泉に仰向けに浸かっている
 どうして気づかなかったのだろう
 
 それからまた今度は風呂の電灯
 が消える
 風呂のいっぽうの外は
 街の路地のようだ
 いくつかの小さな電灯が点く
 
 たらい状のところに
 浸かりなさいと女が言う
 「でもやはり温泉はパンツを
 脱がなければ」
 と言って下げる
 側にいる女が……
 
 (この先はちょっと書けません
 ただ風呂の建物の右下方に
 工事している何人かの男
 が見えてその視線を避けました)
 
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