プラステイックの筆入れに卵焼きをいれて
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プラステイックの筆入れに卵焼きをいれて


m.qyi

プラステイックの筆入れに卵焼きをいれて



夕方、ぼくたちがS区立図書館で本を読んでいると太った黒人の守衛服のおじさんが回って来て、閲覧室と本棚をぬって日本語で「閉館」「閉館」...と言ってやって来たのでぼくたちはもう薄い灯りの図書館をでた。
それから家に帰って御飯を食べてねてしまった。
でも、夜中にぼくは筆入れを忘れてきたのを思い出した。どうしても気になって闇夜に家を抜け出してそうっと図書館へ行ってみると近代的な建物の区立図書館はキラキラ照明が輝いていてガラスごしから色々な人種の人たちが本を閲覧しているのが見える。ぼくの忘れた筆入れも机の上にあるのがくっきりと見え、ぼくはたいへん安心して家に帰った。
ふとんの中でああ、夕飯に食べた黄色い卵焼きは真夜中の図書館だったんだと納得したぼく。ぼくはそれ以来とうとうS区立図書館へは行かなかったが、ぼくのあの筆入れは青いプラステイックでできている。図書館はダイヤモンド。




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