共生

共生



桐田真輔

アフリカのある種のアカシアは
内部が空洞になった瘤を持っていて
そこに蟻たちが住みつく
瘤の内壁は彼ら格好の食料なのだ
かわりに蟻たちは幹や葉に群がる
あらゆる昆虫を追い散らすという

蟻はもちろん動物までは追えない
草食獣のためにアカシアは
甘い味のする莢を用意している
どこか遠くの草原で
種子混じりの糞をしてくれるように

それでも届く範囲の葉を食べ尽くす
どん欲なキリンのせいで
アカシアはどんどん成長したという
それにつれてキリンの首もどんどんと

生き物の生のフォルムには
沢山の意味がこめられているのに
意味がひとつの境界を越えてしまうと
私たちには見えなくなってしまう
共生という言葉の秘密は
まだ解き明かされたことがなくて
届かない高みのアカシアの葉のように
今日もアフリカの風にかがやいている

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