湯浴み

湯浴み



谷田竹至

湯浴みしているおんなのまたのあいだから
くろいすじが流れ落ちた
おれはそのなまこのようなものを手にとり
膝のうえに載せ弄んだ
おんなは恥じらいも見せず
黒いものを流しつづけ
湯は
まっくろになった
あさ
はやくのできごとだ

おれは
いそぎあしで仕事へと向かう
往来のにんげんたちに向かって
おおい
と呼び掛けるのだが
一向に返事がない

おんなはまだ
くろくなったぬるま湯を浴びている

おれはたまらなくなって
いしをぶつけた

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