電動ポンプに吊られた片脚

電動ポンプに吊られた片脚



タケイリエ

水銀灯は うすら寒いほどに冷たく

タール色のアスファルトは てらてらと光り

両脚の膜は 膝まで落とされて

工場の鉄壁の中へ 押しこまれる


発光する街を引き摺って

高架の上を 電車が走る

鈍い速度に合わせて目の前に

張り巡らされた 金網を踏みつける

車窓を追いかける 右手は空を求めながら


辺りには メッキの匂いが立ちこめて

シャッターの隙間から 煙のように吐き出し

交錯する管を 幾つも通り過ぎ錆びた水は

昼夜と問わず 下へ下へとおちていく


電動ポンプの音が 耳元でささやく場所にて

金網伝いを 通り過ぎていく電車を見ていた

群青の空の中に 月が低く掲げられて

あたしはうっとりと 片脚を上げたまま見ていた

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