うろこ新聞 2003年3月13日号(菜の花)
「菜の花」を引くので歳時記を見ていたら、水原秋櫻子のには、「桜草」と並んで出ていた。上の写真は今月初めごろ多摩川堤防で撮ったもの。この季節にはひとつ俳句でもひねって、というところでもないのだが、楽しむ気にもなる。
菜の花畑に入日うすれ
という歌を思い出して情景も呼び起こしてみると、晩春で春が広がっていくイメージである。「霞ふかし」、春霞、いいなあ、と思いつつ俳句をみると、
菜の花や月は東に日は西に 蕪村
これも入日の時刻、菜の花は夕刻が似合うのだろうか。
自分の編纂した歳時記に入れている、
べたべたに田も菜の花も照りみだる 秋櫻子
の句は白昼だろうか。
いずれにしろ、どこか春も定着して花粉も十分こぼれ物みなが安心した気配がある。
菜の花の暮れてなほある水明り 素逝
この情景も暮れ方。春の夜、いいなあ、とまたため息をついてみる。
菜の花の畑の脇にある小川、日も暮れて黄色い花の群れはひっそりと息を吐いて咲いているが、川の面にはどこからかの光を映してきらきらする。ふと見ると、微かに闇に黄色い菜の花がぼんやり。

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