うろこ新聞 2001年月日
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うろこ新聞 2001年8月8日号


【うろこ新聞創刊の辞】
 この新聞はごちゃごちゃをコンセプトとします。これは8月8日号ですが、試験版の意味も兼ねていますので、記事は増殖します。この新聞に投稿を募集します。
 おもしろいものならなんでもどうぞ。ちょっと下ネタ小話。料理レシピ。怖い話。旅行記。身の回りの事物(植物、動物)などの話題。本の話。詩の話。小説の話。etc.
なおこのページの製作者=僕は色合いに自信がありません。この色にしたら--という意見がありましたら、「編集室/雑記帳」のほうへどうぞ。



8月7日のカオス。
ペットの写真、あなたの地方に特有の植物や、景色の写真をお送りください。jpegかgifフォーマットの画像に限ります。


足立和夫のお薦めミステリー小説 (1)


 いったい、この著者のこの作品は、ほんとうに面白く愉しめるのだろうか。時間とお金がムダにならないだろうか。いつか読んだこの著者のあの作品は途中で投げ出してしまったが、いま話題になっているこの作品は買ってみて裏切られることはないだろうか。書店のなかで、このような様々な思案をしてうろうろと彷徨い、ためらってしまう経験は誰にでもあるはず。現に私自身がそうだ。いまでも、そんな状態である。迷った末、ようやく選んで買った作品が失敗作だったとわかったときには、一日がムダになってしまった気分に陥る。ことにミステリーというジャンルは多種多様なエンターテイメント小説のなかでは、評価があってないようなものなので、このような状態になる傾向が強いのだろう。
 たぶん、売らんかなという出版社の姿勢が露骨で、読者にツケを回しているのだろうと勘ぐれるように思う。たとえば藤原伊織(ふじわら・いおり)の長篇第二作『ひまわりの祝祭』。誰が読んでもミステリーとしては稀にみる壮大な失敗作といえるが、そのことを正面切って物申した人は、私が寡聞なのか聞かない。そのまま講談社文庫に収まってしまった。私は文庫新刊のとき淡い期待を抱いて、手にとった。おそらく加筆補正あるいは全面改稿されているのではと。だが、やはり単行本の内容のまま文庫化したのだ。編集者の怠慢か出版社の商売の事情であろう。結果として代金を払う読者の期待を踏みにじったとしか思えない。読者不在の商売が成り立つことに、疑問と悔しさを強く感じた。
 まあ、そんな理由で、このコーナーで私自身のささやかともいえる読書体験の中からお薦めミステリー小説をご紹介することになりました。読者の時間とお金のムダを省くことが狙いです。特に、ミステリーに興味はあるが、どの本から読んだらよいのか見当がつかなく困惑されている方に、ぜひ拙文を読んで参考になればと願います。
 藤原伊織の長篇第一作『テロリストのパラソル』(講談社文庫)は平成7年第41回江戸川乱歩賞と平成7年下期第114回直木賞をW受賞した、文句なく日本ハードボイルド小説の傑作である。的確で滋味あふれる深い文章が特徴で、巧みな会話が魅力的。構成もよく練られていて、意表を突くあざやかなストーリーの展開に強く魅かれ、最後まで興味津々。主人公の語り声がそばに聞こえるようだ。「アル中バーテンダーの島村は、過去を隠し二十年以上もひっそり暮らしてきたが、新宿中央公園の爆弾テロに遭遇してから生活が急転する。ヤクザの浅井、爆発で死んだ昔の恋人の娘・塔子らが次々と店を訪れた。知らぬ間に巻き込まれ犯人を捜すことになった男が見た真実とは・・・・。」(文庫版の裏表紙より) 全共闘世代のひとには、特に興味をもつ物語でしょう。このひとの作品は、いつまででも読んでいて味を噛みしめていたい文章で成立している。現代ミステリー小説家のなかでは随一の文章家といってもいいほど。結城昌治の現代版かと思った。短篇集『雪が降る』(講談社文庫)はミステリーというより普通小説に近いが、とても味わい深いよい作品だ。『てのひらの闇』(文芸春秋・平成11年)もお薦め。まだ文庫にはなっていません。ともあれ新作が刊行されれば必ず購入したい、注目の作家。
 次回は、なぜか話題になることが少ない、天才的ミステリー作家逢坂剛(おうさか・ごう)をご紹介します。

(買われる前には、ネット検索して、さまざまな人の紹介・感想を読み、ご自分の好みの小説かどうか判断してみてください。)

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