悲しみ

金属犬






溶け入る響きを
源を
虚しく響く黒を
掌に落ちる盲目を
尖端の獣骨
その先の先に痛みがある
無数の零音を集めて
無宿者たちは耳を閉じる
瞑想でもなく
ただ暗転する
この臨界を
歌舞伎町の夜は
鬱血する
無限の淵を撫でる画家の
厚い筆触
辿り着いた溜息
太陽の死
日向に向かい冬を舐めよ
切刻された牧歌
駅を通過する電車の窓に
終着は無く
また
線路に横たわる偶像も無く
しかし
その先に痛みがある
握る月砂は赤土に沁み入る
海に浮かぶ一隻の
船の帆に似てそれは
灰色の
幻の如く
映るものは通り過ぎる
塩化ビニールの爛れた
過去よ
目眩を破いて
大河を謳う
大河を越える
その先に痛みがある






うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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