続ける

RAN



    夏を見て次の春まで筆を置く
   
    蛍を醒ます水滴の一滴

    一流も流れにすぎぬ順三郎

    収穫祭は人類が祝い

    創られぬ夜を草木の夜と知り

    萩が這い出で密かに綴る


続ける 付ける 繋がる 言葉を続ける
続ける といったら 中断はできない
それで 付ける
付ければ 繋がり 続く

    
    恋文も届かぬ国の地図を見る

    熟るる林檎を旅人に訊き

   
一枚のデッサン その林檎が腐敗し始める

「人の死体も腐敗するらしい」
「気持ちはわかるけど 見たことないしね」 

空間を隔て 時間を隔て 砲弾の音が聞こえる

「さて 続けましょうか」


    山を見下ろす黒き鳥影

    半鐘の高さに怯える長子あり


爆風が襲った

「ここらで芭蕉の猿蓑をみてみようよ」

提案も聞こえず 形もないれんじゅうは
参会するしかない しかし

空間を隔て砲弾よりも永い営みに 声は届く
時間を隔て爆風よりも永い時代を 声は棲む

    雪片の傾斜に光るジャムプかな

    遠く望める山里の村

付ける 繋がる だから続ける


中断はしない 


うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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