野辺送り

まつおかずひろ(hiro)



鏡の向こうに

死体が転がっていると思っていたが

それは俺らしい
回転ベッドの上で眠るおとこの
あそこは恥ずかしいくらいに縮こまっていて
陰毛に取り囲まれている
イガグリならば幾分硬質のはずが

割れた先っちょは柔らかそうで紫色になっている






回転ベッドの上で回転したのはいつだったか思い出そうとしたら
海辺の観覧車が浮かんだ
女は
すっかり極楽へ行くつもりである
ぶつぶつ経を続け、頂上へ
女は突然巫女になって叫び、胸をはだけて白い乳房を見せた





本当に死んだのか、それとも死ななかったのか、定かでない
野辺の草は枯れている

下草はそろそろ緑を見せてもいい頃なのに色はない
そう言えば

幟もない

旗もない
音もない

土と枯草と煙ばかりだ
送る人間は俺、送られる人間も俺

両方とも煙に近づいている

人を焼く臭いを嗅ぐ瞬間、今度こそ俺たちは本当に眠れるだろうか













うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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