十月の冬浅見 豊
わたしの手
芥子菜のとうがたちそれを摘む手
一日霧のような雨が土地を濡らす日
濃い緑の大きな葉に揺れて
雫を浴び蛙が跳ねる日
濃い緑の大きな葉から葉へ
蛙が跳ねて逃げる
十月の冬
ねえ、ごらん
雲は空一面に広がり
そんな中
今夜も雨はやって来るのだろうかと
雫に濡れふと
わたしが考えたりもするのだろう日
(そのとき
やはりわたしは
することもせず空を見ているのだろうか)
十月の冬
手はまた
ほっそり伸びた茎を摘む
その手のあわいに雨の影が伸び(出来ればあの時あなたに似ていたかったと)
かがむ耳元に(手はそんな言葉に満ちているような気がするけれど)
雲たちの、せかしてやまぬ声が響いてくる(わたしはもうどこかあなたを忘れている)
いぶかしげな蛙
蛙
おまえは雲を見ているのか
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