少年

まつおかずひろ(hiro)



いくえにも
いくえにも
藻がただよう
ゆうまぐれ
岬の西は
逆光のうみ
打ちよせる
波は
泡つぶを
はこび
消す

濡れそぼつ
砂利をつかんで
宙に放てば
一瞬の楕円
うみの花火
石は
意志あるかのように
うみに飛び込んだ
また再び
静かなるうみ
潮のかおり

闇ふかまって
蝶が一頭
さまよいきて
残照にきらめく
身を横たえて
まどろめば
くちびるにふれる
微風
金銀の翅(つばさ)
たわむれに
腕で
宙をはつれば
あわれ蝶は
手のひらにあり
身のふるえは
一瞬
断末魔のこえは
「にくし!」


くちびるの上に
擦(なす)られた
鱗粉
残るを
知らず
少年は
岸辺を去る



うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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