こころの花を咲かせてね

ヒネモス




 生まれ出てきた畑も種もちがい
 与えられた肥やしも もらったお水も
 授かったくわの手も さまざまに

 花には名前がありません
 花には形がありません
 花には他力がありません

 あなたのその手に掬いあげられ
 咲くひねもすの花
 誰もきらいにはなれないので
 こころに花を咲かせます

 ちがうことも 見えていることも
 ほんとうに大切なことではありません
 表上で柵をほとこうとして絡まるいと

 生まれてきたその芽を摘まないでね
 他者からもらった知らない光を遮らないでね

 ひとそれぞれの想いが大きくて
 小さな花が見えません
 
 見えやすい土の上の世界よりもとに
 土のなかでは みんな根を寄せ合っています
 見えない根の下で みんな同じ胞に包まれています
 暗やみの映える空にも みんなまるい月を見ます

 あなたがもし引き千切られたなら
 誰かに その分だけ やさしくなれるでしょう
 憎しみからは おちつきを
 悲しみからは おもいやりを生むその花は美しいでしょう
 しおれ 朽ち なくなってしまっても
 こころの花を咲かそうよ
 見えない根のさきにみずみずしい
 ほんとうの花を咲かそう

 あなたの花を咲かせてね
 こころの花を咲かせてね










 




うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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