おくすり

ame*



おくすり



おくすりを ちょうだい
べつに びょうきでは ないの
でも おくすりを ちょうだい
ばかに つける くすりなら
まにあってるわ
だけど おくすりを ちょうだい
あの おくすりを ちょうだい

たのしい きぶんになる おくすり
しあわせに なれる おくすり
せかいが ばらいろに かがやいて
さっきまでの かなしみや くるしみが
うその ように きえさってしまう
そんな ひみつの おくすり
そう あの おくすりを ちょうだい

にんげんは くるしむために
うまれてきた わけじゃ ないから
いつも たのしく すてきな きぶんで
すごしていく けんりが あるわ
だから あの おくすりを ちょうだい

ほかに なにも いらないの
おくすりが あれば いいの

かぞくと すごす だんらんの ときや
ともだちと さわいで いたときや
こいびとと いっしょの あまい じかん
それなりに ときめきは したけれど
でも それとは ぜんぜん
くらべものに ならないくらい
すてきな せかいが あるのだわ
あたしは しっている

ただ やさしい ひかりの なかで
ゆるやかに たゆたう じかんと
いったいに なって
それを かんじている

いちにちじゅう
なにも しないで
なにも たべないで
ほほえんでは いるけど
だれも あいさないで

くうきに とけていく からだ
てんに まいあがる こころ
そして そのとき あたしは
えいえんと むつみあう

だから あたしに かまわないで
あたしに はなしかけないで
あたしに たいして
よけいな かんじょうを もたないで
あたしの ゆるやかで
こうふくな じかんを こわさないで


おくすりが きれる とき
それは かんがえる だけでも
みのけが よだつ ことだわ

みじめで くるしく みにくい
そんな じぶんに とつぜん きづいて
どうしようもなく さみしくなる
かぎりなく あたしを さいなむ
ふあんの きょだいな かげ

そのときが あまりにも おそろしいから
どうしても それだけは さけたいから
いまは そういう りゆうで
おくすりが ほしくなるのかもね

おくすりを ちょうだい
おくすりを ちょうだい

もう どうでも いいの
あなたが なにを いっても
せっとくりょくは ないし
よけいな おせわだわ

とにかく おくすりが ほしいの
たぶん あたしは
ひとを だましても
ぬすみを おかしても
だれかを ころしてでも
おくすりを てにいれるわ

それは ただしいことに ちがいないわ
だって そうとしか かんがえられないもの

にんげんは くるしむために
うまれてきた わけじゃ ないから
いつも たのしく すてきな きぶんで
すごしていく けんりが あるわ
そう ぜったいに あるわ

でも きっと また
あの すばらしい じかんは やってくる
あたしは しっているの
かぎりなく やさしくて
おだやかな せかいを
だって あたしは そこに いたのだもの
そして きっと また あそこに いけるわ

だから

おくすりを ちょうだい
おくすりを ちょうだい
おくすりを ちょうだい











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