父を見る

まつおかずひろ(hiro)



五尺九寸、二十三貫
昔の男にしてはかなり大きい部類で

ノンプロ野球選手でもあった父が
華に埋もれて眠っている

兵隊にも行った
玄海灘を渡る輸送船が魚雷攻撃を受けて沈んだ
そのときも父の肺活量の大きさが
父を救った
仲間も救った

ポパイの真似をした父の腕っ節にぶら下がった
ビクとも動かなかった

華に埋もれた父は焼かれて骨になった
そのとき初めて父を正面から見た
生前、父の顔は斜めからしか見たことがない


うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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