まつおかずひろ(hiro)



風は
あなたにも吹いて
ぼくにも吹いて
あなたの中にも吹いて
ぼくの中にも吹いている
あたりまえに吹いている
あたりまえに吹く風を
あたりまえに感じるのは
それでも
けっこう年季がいるものだ
若いときなどは
自分で風を起こそうなんて
息巻いていたけれども

風は
あなたを追い越して
ぼくを追い越していく
知らないまに追い越してしていく

風を楽しむためには
身を軽くしよう
頭の中をかっらぽにしてね
ポケットにも何も入れないでね
なんにもいらないからね
身ひとつ
ふうわりふうわり
軽くしてね
ボキッと折られないように
やわらかくしてね
風を起こそうなんて考えるな

風は
うしろからもきて
前からもきて
右からもきて
左からもきて
どちらにも行けなくなって
からだがくるくるとまわって
めがまわって
吐き気がして
泣きたくなって
叫んだとき
やっと
口から
小さなひと吹き



うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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