iku





ただ
その花は瑞々しいその花だけであって欲しい
息吹きの無い花であるよりも
創り出された花であるよりも

どこかが違う似たものどうし達は豊かに街なかへと漂い
矛盾に蝕まれた固有名詞は次ぎ次ぎと弾けて消えるさだめ
言葉に宿る魂が空へ逃れようとしているのを
鉛色した感覚の背中にある無機的な意図がさりげなく
後押しをしている

名前が幾つもある人々にとってごく自然な時の推移は
魂の守りびとの瞳を少しばかり曇らせてはいるが
勝手にひび割れてゆく現代の偽りの終焉期に向かって
加速を始めた再定義を止めることは
誰にもできぬこと

ただ
その花は瑞々しいその花だけであって欲しい
いのちを知るひとのために
実り また花ひらくために



うろこシティアンソロジー 作品篇 No.1 目次前のページ次のページ
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