高田昭子
草原を
野生馬の群れが走る
地を揺るがす蹄の音
嘶きと嘶きの交響
風切り裂いて
さらに風が呼び込まれる
立ちすくむわたしの背後から
馬はわたしの西側へと走り抜ける
草原はまた静かになる
渇いた風 吹き渡る
そこは
幼い時から幾度もみた夢の草原
野生馬の辿りつくところには
河があるはずだ
――お前が産まれたところ
――そして小さなからだを洗ったところ
父と母の遠い声が聴こえてくる
わたしは
馬の蹄跡を辿って
草原を一人歩いてゆく
地平線だけの世界
空に手が触れるところ
ここはまだ夢の続きだろうか?
一頭の野生馬が群をぬけて
わたしの方へゆっくりと戻ってくる
つややかなやさしい背
跨るわたしの腿の内側に
波打つ馬の背筋
夢は幾度も揺り戻されるが
わたしは還るところを知らない
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