サマーキャンプで仲間に内緒で彼が海辺に埋めたもの
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サマーキャンプで仲間に内緒で彼が海辺に埋めたもの


桑原義江

取り消された夏と
失われた永遠の あいだで
うらぎりものの 賢人が
おしゃべりな 淫乱女を 追いはらい
忠義な おろかものたちの
純潔と 禁欲を 称賛したものだからさ

世間はいまや
腐臭をはなつ憎悪に
満たされつつあるのだが そこへ
ずるがしこい
ぼくたちの救世主が やってきて

男の子たちに

どこかになにかがあるのかもしれないけど、
どうせそれはぼくたちのものじゃないんだ!

などという 愁嘆場の お告げを
ご披露くださった ものだからさ

境界線が こんなにも 鮮やかだなんて、
いままで全く知らなかったよぼくたちは!

なんて 感謝しながら 男の子たちは

凍え死にしそうなほど あかるく
ほほえんで
くちもとに ひびがはいって
痛くなっても
ほほえんで それから

天をあおいでみると

コロナだけになった 太陽が
男の子たちをみて 泣いていた。

誰もぼくのカップを満たしてはくれない。
だって 空っぽであることがぼくだから!

なんて つぶやきながら 泣いていた。

太陽はもちろん
己自身を哀れんでいたんだ。

男の子たちじゃなくってね。



注:「男の子たち」のところは「ビバリーヒルズ高校白書」の頃のケリー・テイラーがピーチピットにたむろしてるブランドン達にかける朝の挨拶「ハーイ、オトコノコたち!」のニュアンスで読んでください。

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