暗中
うろこアンソロジー 2001年版 目次前頁(目次)次頁(声)
うろこアンソロジー 2000年版 目次Shimirin's HomePageUrokocitySiteMap

暗中



足立和夫

暗く輝く舗道に
群れるひとの息
灼熱から遠ざかるからだに
ひっぱられ
脇道にそれて
ひんやりする暗がりに
肩を入れる
夜に流れる
うすい闇は
底なしだ
ぼくは冷たい空気のなかを
ことさらゆっくり歩く
いつでも闇は
孤独を新しくして
逃れられない人生を
葬るようにみえる
呼吸が肺をぬけていく音
死は謎のように
いつもそばにある
ぼくは闇に溶けていく部分の
ひとつなのだろう
その冷徹な想いは
静かにあたりまえのように
からだじゅうに届いていく
反転することのない暗黒の奥底で
怜悧な星たちはみずから爆裂をつづけ
とてつもない大きな沈黙を
苛烈な天空に解き放ち
光の束とともに
ぼくを襲撃しつづける
逃れることはできない

うろこアンソロジー 2001年版 目次前頁(目次)次頁(声)

うろこアンソロジー 2000年版 目次Shimirin's HomePageUrokocitySiteMap