トキヲ

トキヲ



みー

五反田駅を降りると北は山の手、南は雑の街

目黒川に沿い少し歩く
そして南へ約10分ほどで環6との交差点
そこを東にちょっと行くと私鉄・大崎広小路駅の
いつも見上げた急な階段

角の肉屋を右に廻り石畳の坂道へ

日の高いうちは八百屋のおやっさん
どんつくどんつく…と太鼓を打ち鳴す「南無妙…」
そして近所に有る立正大学の学生たち

とっくに日の落ちた時間には蛍光街灯の下

くたびれ果てたまばらな人影

左のクリーニング屋の角
狭い石階段のどんづまりに私は住んでいた

丸く白いガラスシェード
白熱灯の燈るアパートの玄関先
ガラスの引き戸を開け
静かに階段を上る

部屋に入り窓を開けるとざわめく車、脈打つ電車の音
風に運ばれ身に染み渡る鼓動

|
うろこアンソロジー 2000年版 目次| 前頁(河原の歌声)| 次頁(血のつらら)|


Shimirin's HomePage へ
うろこシティ表紙へ