南川優子 詩のページ
The Stags by Kathleen Jamie  原文はこちら

雄鹿

これは大群だ。 あなたが 風にこすられたヘザーを通り
丘の尾根へと 午前中ずっと わたしを上流まで
引っぱっていきながら わたしに見せたかった
獣たちだ。 
次の峡谷で わたしたちの下には
冬から 空腹で降りてきた 威厳のある
穏やかな同胞たちがいて 契約書の署名者のように
ひざまずいている。
重たい 骨董品のように磨かれた 彼らの角は
港のマストや 町の尖塔のように
草木の上にそびえている。
わたしたちは 寄り添いながら横になる。 そして風が
わたしたちの男女のにおいを 打ち飛ばすけれど
すべての雄鹿の顔が わたしたちの方向を見ているようだ。 わたしたちの方向であって
わたしたちではない。 わたしたちは敬意を払われ
わたしたちは彼らに敬意を払う。 あなたはわたしを
感心させたかったのでしょう わたしの視界へ わたしたちが分かち合う国を
持ち上げようとして
あなたが知っていることへと わたしを深く導こうとして。
けれども 怖がらせるのが嫌で あなたはもう
静かに去ろうとしている。 もちろんわたしは あなたについてゆく
ほとんどどこにだって わたしが今まさに ついてゆこうとしているように。