南川優子 詩のページ
Moon by Kathleen Jamie  原文はこちら

昨晩 わたしの屋根裏部屋に
月が 光の長方形として
そっと入ってきたとき 彼女が 哀れみに来たのだと
わたしは感づいた。

それは八月のことだった。 彼女は 小さな暗闇の
旅行かばんを持って 旅してきた
そして 初めの数少ない星々が
北の空へと戻ってゆき

そして わたしの部屋は 彼女がいないのを
寂しがっていたようだった。 彼女は 本棚に
興味があるようなふりをした
他の物が 潮だまりにいるような

予期せぬ生き物で
かき立てられている間。
かすかに光る 緑色の鉢のなかの ビーズのネックレス
紙で混みあった机

本も 開いて 告白したいように
見えた。
月が ある意思を
抱いているのだと 確信しながら

わたしは待った。 彼女の冷めた視線が まず
遠くの壁に止められた
花のスケッチに 移り
松の木の床づたいに

もたれかかろうと 滑るのを
長い間見守った
わたしが もうじゅうぶん と思うまで。 「月よ」
わたしは言った。 「わたしたちは今 ともに脅えている。

単純な愛の言葉
それはあなたには 難しいことなの? 愛の言葉を言いなさい。
あなたはわたしの母じゃない。
わたしの母とは わたしは死ぬまで待っていた。