南川優子 詩のページ

家系

妻の
やかましい口の形に咲いているのが
一般的にみごとな薔薇

夫の
思いつめた顔に広がる色が
ありきたりな雲ひとつない空

子の
恥知らずな冒険心が
俗に言う生きのいい魚

犬の
みすぼらしいうなり声が
万人の心を癒す海潮音

という 自然界の掟が
いつしかできあがっていったので

薔薇の
しおれた立ち姿が
妻の写真写りのいいポーズで

空の
雨を予感させる雲の動きが
夫の幸福な高笑いで

魚の 賞味期限を過ぎてたるんだ内臓が
子のはにかんだ横顔で

海潮の
怒気を帯びた水しぶきが
自我にに目覚めた犬

という家系が
おのずとできあがってゆくのだ。