南川優子 詩のページ

新しい友達ができるたびに
わたしは鍵を作る
友達の名前を
アドレス帳に書きこんでから
真鍮を鋳型に
注ぐ

今日 職場で
新しい秘書に会った
窓際に座る彼女を
ときどき盗み見しながら
キーボードを打つしぐさを
記憶に細かく刻む

帰宅後
彼女のイメージを孵化し
彼女の指を真似て
細長い鍵を作る
そしてカチャカチとャ鳴る
タイピングを再現しようと
鍵にギザギザを入れる
地下室に獲物を吊るすように
鍵をフックに掛けたら
アドレス帳の彼女の名前に
斜線を引く


わたしは彼女の家に向かい
ドアの穴に鍵を入れ
回す