うろこ新聞 2003年4月6日号第2面(吉本隆明さんにお会いする)
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うろこ新聞 2003年4月6日号第2面(吉本隆明さんにお会いする)


 今日は、ある件で吉本隆明さんのお宅におじゃました。縁あって人についていったというのが正しい言い方かもしれない。
 吉本さんの著作は95パーセントは読んでいると思うし、そのうちの3分の1は2度以上読んでいる。
 ぼくはじつはこれだけ尊敬する文学者ではあるが、講演などには行ったことがない。ただし周辺資料として現在弓立社から出ている講演のCDは全部買っているし、生身の吉本さんに興味がないわけでもなかった。ウェブでも糸井重里さんの「ほぼ毎日」新聞のサイトで「まかない飯」と題された談話が載っていて、うまい題を付けるなあ、と思いながら読んで、写真なども興味深くながめた。
 でも一生、お会いできなくてもいいや、とも思っていた。こういうふうに書くと向こうも前からこちらを知っている、と思うかもしれないが、そうではない。
 ただし興味の接点や生きている場面は共通するところもなくはないわけだから、お会いできても不思議ではなかった。吉本さんの本を書評したこともある。
 家の前にのんきに猫が器から何か食べていた。吉本さんには猫の本もある。落ち着いて話を聴いた。気さくな方である。
 なんだか懐かしい気持ちが今日一日中あって、それは著作に親しんだ書き手に直感的に通じる何かがあるのだとその理由を思ってみた。『背景の記憶』(宝島社)という本がある。94年に出たこの本を帰ってから書棚から取り出してみた。住む地、というのは偶然だけれどまた、身に染み付くということからいえば、何かその地から受けるものもあるのだろう。
 吉本さんはぼくが何者であるか、鋭い直感の持ち主であるから、すぐにわかっただろう。ぼくも新しくわかったことがあるような気もするが、これは胸の内に秘めておこう。


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